大事なチェックポイント
シルク製品のOEM生産業者を選ぶ上でのチェックポイントをご紹介します。それぞれのチェックポイント項目をクリックしてください。
基本的なチェックポイントを押さえた上商品づくりを進めていくのが理想です。
第一には、言うまでもなくシルクに関する実績があることが必須です。
シルクは天然繊維のなかでも取り扱いが難しくため、他の繊維と同じ感覚で取り扱うと失敗します。
複数あるシルクそれぞれの特性に精通していることで、業者としてはスタートラインにさえ立てません。シルクに関する基本的な知識と実績がなければ、最適な素材選び、生産方法や生産ルートの提案ができないだけでなく、ご希望内容とのミスマッチがおこり、無駄な費用と労力を費やすことになります。まずこの点は確実に押さえておきましょう!
製品だけでなく、原材料を手掛けたことがなければ、シルクの特性に関しては理解できません。生糸と紡績絹糸の根本的な違い、紡績絹糸特有の「つなぎ節」などの問題、シルクニットの編み組織別の生地特性や染色条件、シルク織物の取り扱いの注意点など、それぞれの特性は取り扱ったことがないということであれば、知識として蓄積できないことです。またシルクは「養蚕業」という農産業で生産される農産物であり、国内海外問わず価格の変動が高く、長期的に取り組みのある業者でなければ安定的な供給手配が難しい素材といわれております。できる限り、原材料に手の届く業者を選ぶことが重要です。
ひとくくりに「シルク」といっても、産地や糸種、加工方法などにより特長、特性に関しては千差万別です。それぞれの特性や機械との相性、生産したい製品との適合不適合などの知識が少ないと、なめらかな肌触りが求められる製品に価格重視で絹紬糸を使ったり、ふんわり柔らかな肌触りが訴求ポイントの製品に、とにかくいいものをという理由で生糸を使用したりするミスマッチを起こしてしまうこともあります。無駄な費用や労力をかけることなく、最適なルートでの生産設計をするためにも、最低でも、生糸・絹紡糸・絹紬糸などの知識のある業者を選びましょう。
一例になりますが、デシンとツイルでは織り方が異なります。
最低限の知識がなければ、工場との交渉や生産管理はできません。
一般的な知識があれば、工場ごとの個別事情はあるにせよ、同じ知識レベルの中で相互理解が可能になります。この点は、ご自身で直接工場へ依頼される際にも押さえておく必要があります。
シルクの取り扱い実績がない業者に多い傾向として、「シルクだから・・・」という漠然とした理由で欠点を正当化したり、生産条件を限定して説明することがあります。
下記のようなことが考えられます。
・原材料が高いのはシルクだから。
(確かに一般に高い原材料ですが、手配ルートや糸種によってはリーズナブルな対応も可能です。)
・B品率が高いのはシルクだから。
(本当の理由は、紡績絹糸特有の節による不可避な不良についての説明とその許容範囲を事前に取り決めていないことがあります。)
・染色堅牢度が悪いのはシルクだから。
(その製品にどの程度の堅牢度が必要かのヒアリング不足と適正染料・染色方法の選択ミスが考えられます。)
・その生産方法が選択できないのはシルクだから。
(その糸種を使用すると、その機械は正常に動かないから、別の生産方法を検討しましょう。」が正解になります。)
シルクだからと言われて、「そうですか・・・」と答える必要はありません。
ご自身が理解できるまで、質問を繰り返してください。それらにきちんと答えていくことも業者の仕事といえます。
長期的な製品展開・販売戦略を考えていらっしゃる方は、この項目も重要なポイントといえます。
ポイント2の通り、シルクという素材に関しては長期的な取り組みを築いていかなければ、国内生産・海外生産とも品質やリピート生産など安定した体制が作れないといえます。
短期的なお付き合いでは、初回の取引はうまくいっても、リピート生産時に同じ原材料の手配ができない、価格が極端に跳ね上がって販売価格の調整ではカバーできないなどの問題が出てくる可能性があります。OEM業者との間で長期的な取り組み関係を築くことができれば、生産計画や長期的な展望(販売戦略やアイテム展開)などを共有することで、方向性を調整しながら進めることも可能になります。
例えば、長期的な販売計画の中で販促的にスポットアイテムを作りたい場合には、再生産はできないけれども、すでに生産中止になった希少在庫糸などを使って、特別売り切りアイテムを生産する方法を提案することができますし、細く長くリピート販売を目指していく製品開発の場合、比較的価格変動の少ない原材料を使用して長期的に価格を安定させる方法を提案することも可能です。
見積もりは安いに越したことはありませんが、その理由をきちんと聞くことは非常に重要です。
価格変動リスクの大きい素材であるシルクは、残念ながら最終サンプルが確定するまで、製品見積もりが出しにくい素材です。 とりわけ、企画段階や初回サンプルの段階では、業者の体質にもよりますが、参考程度の見積もりしか提示できないと考えられます。
原材料等の仕入れ時の為替や原料相場の変動などで1カ月後の価格は保証できません。 保証できない部分に関しては、良識のある業者であれば約束を守って、損してでも見積もり価格を厳守しますが、その生産分限りで終了という対応になります。そうでない業者の場合は、いざ原材料手配の段階になって、見積もりの変更をお願いすることになるでしょう。
それよりもレベルの低い業者に至っては、生産してから実は価格が上がったと値上げを要求してくることもあり注意が必要です。業者からの見積もりが出た場合には、その背景や有効期限についてきちんと確認する必要があります。
きちんとしたOEM業者であれば、イメージサンプル品などを見ることで、原材料から生産方法、おおよその生産ロットや生産コスト、市場での価格設定まで、論理的に分解して的確に説明が可能です。
よほど特殊で革新的な技術で生産されていない限り、どんな新製品であっても、「既存の選択肢の組み合わせによって新しい価値を市場に提供している=新製品」であることは間違いありません。
既存の選択肢の組み合わせは、一定の知識と実績があれば、分解してわかりやすく説明することが可能といえます。
業者チェックの方法としては、サンプル品の原材料の背景や生産方法、そのほか特殊加工の有無などを詳しく聞いてみるといいでしょう。
そもそもサンプルは何のために作るのでしょうか? サンプル品を作るためだけにサンプルを作成するわけではありません。原材料の品質チェックや縫製レベルのチェック、実際の使用感などを事前にチェックして、ご希望の最終商品イメージに適合しているかどうかを判断するためにサンプルは作成します。
では、サンプル品を生産した工場(生産現場)と実際に生産する工場が異なる場合、そのサンプルに意味はあるでしょうか。
サンプル品がどれだけきれいに仕上がっていても、お客様の手元に届く最終商品のクオリティーが低ければ、意味はありません。そのような当たり前の理由から、本番生産をする生産ルートでサンプル品をつくることが業者提案の必須な条件といえます。
本番生産とは別ルートを使用して、サンプル作成だけは早いような業者には注意してください。 本番生産で必ず痛い目を見ます。製品づくりは慎重に進める必要があります。
工場(生産現場)との長い関係性があると、新製品開発やロットに満たない数量での差し込み生産、 思わぬ欠品時のリピート生産対応といった、多少の無理な依頼にも対応してくれます。
会社同士でのお取り引きとはいえ、やはり最後は人と人との関係性が大事です。はじめましてのお客様と、気心のしれた担当者とでは、対応に差が出ることもあると思います。
ご発注元は、こうしたOEM業者と工場とが築いてきたしっかりとした土台をうまく利用することで、製品づくりをスムーズに進めることが可能になります。
最後はこのポイントに尽きます。結局、OEM生産がうまくいくかどうかは、ご発注元とOEM業者が、きちんとしたコミュニケーションを形成できるかどうかが大事です。
業者は、最初のお問い合わせの段階で、最低限聞いておく必要のある項目がございます。これらの情報を聞いてこない業者は話にならないといえるでしょう。
また、業者の側からしても、これらの情報をきちんと把握しておかないと、どういうプランニングや提案をしてよいかわからず、全く話が進みません。
・展開スケジュールと最終納期
・最終生産予定の数量
・使用したい原材料
・生産国
・作りたい製品のこだわりのポイント
・最終的な展開のイメージ
少なくとも、展開スケジュールや展開イメージを聞いてこない業者は、ご発注元の依頼してきた製品には興味がないと言っているのといえます。 スケジュールには責任を持ちませんと言っているのと同じことです。最初にかけ違ったボタンは、最後には大きな食い違いとなってトラブルのもとになることもあります。
きちんとした業者は、できるだけそういった行き違いが無いよう、最初の段階で聞くべきことをきっちりと聞いてきます。 聞いてこない業者は、前述のようにご発注元の依頼にあまり興味がないか、対応レベルが未熟かのどちらかといえます。
以上のようなチェックポイントを参考に、ご希望にフィットした別注業者をきちんと選び、長期的に安定したシルク製品の生産ルートを確保することが大事です。